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ジュペッタ♀じゅじゅ
捨てられたころの夢。
以下じゅじゅによる一人語り(一人称違うけども)。

***

 時々昔の夢を見る。
 ゴミ捨て場で目を覚ました時の夢だ。二回捨てられたから時々ロケーションは違うものの、あの実にイヤァな気分は共通なのでどちらにしろ悪夢であることには変わりない。もう慣れ過ぎていて、夢の中でさえこれが現実でないことを認識できる。しかしまだ覚める方法は見つけていないので、なるべく早く目が覚めるように、ぼんやりと暗い空を見上げながら念じる。今日は服装からして一度目に捨てられたときの夢らしい。それがわかったからといって何があるわけでもないけど。
 一回目は普通に捨てられた。ジュジュヌールと(センスはどうあれ)名前をつけて、どこにでもつれまわしていたくせに、新しいおもちゃを買った途端不用品として箱の中に押し込められ、長い長いブランクのち、持ち主の「もうポイする」のひとことで捨てられた。あんなに可愛がっていたくせに。売り場で私を抱きしめて、買ってくれなきゃ帰らないと泣きながら駄々をこねていたくせに。
 心の中で恨み言をつぶやいてはいたけれど、ジュペッタになったのはもっとあとのことだ。そのときはゴミ捨て場に通りかかった女の子に拾われて、救われた気持ちになったから。
 彼女の名前はアキという。アキは前の持ち主の乱暴な扱いによって破れた部分を直したり、定期的に洗ってくれたり、とても大事に扱ってくれた。「こんなにかわいいのにどうして捨てちゃったんだろうね」とアキはいつも笑ってくれた。私は私を可愛いと思ったことなど一度もないし、アキ以外にそんなことを言われたこともないけれど、アキが褒めてくれるたびにとても幸せだった。
 何故アキが私を捨てたのかは知らない。気づくとまたゴミ捨て場にいたからだ。今度は誰にも拾われないまま、七日七晩過ごした。絶え間なくアキを恨み続けながら。
 八日目に目を覚ますと、自由に手足が動くことに気づいた。ゴミの山からおそるおそる下りると、そこらへんをふわふわと歩いていた(漂っていた、か)ムウマに話しかけられて、ああ私は同じ類のものになったのだな、とようやく気づいた。
「ジュペッタになるなんてえ、よっぽどうらみがあったのねー」
「そうなの?」
「そうなのよー。じゃなきゃ世の中ジュペッタだらけになっちゃあう。ほらー、探しに行かないとー。ジュペッタになっちゃったんだからあ、本懐とげなきゃー」
 ムウマに促されて、私は歩き始めた。屋内にしかいなかったから、アキの家の外観はわからない。ただただアキと出会うことを願って歩き回るしかない。
 アキを探し当てられるその日まで、この夢を見続けるのだろうな、と、あきらめに似た確信を抱いた。

***

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